海外進出を目指す企業は勢いを増し続けています。
2020年に行われた日本貿易振興機構(以下省略JETRO)の調査では、海外進出の拡大を図りたいと答えた企業は43%に上りました。また、今後新たに輸出に取り組みたいと答えた企業が4年ぶりに増加し、新型コロナの影響下でも海外進出の意欲が衰えなかったことがわかります。
この記事では、JETROの調査や最前線で企業の海外進出を支援する食品輸出コンサルタント高野氏のインタビューをもとに、海外進出の背景や海外進出に欠かせない翻訳スキルを明らかにしていきます。
2020年に行われた日本貿易振興機構(以下省略JETRO)の調査では、海外進出の拡大を図りたいと答えた企業は43%に上りました。また、今後新たに輸出に取り組みたいと答えた企業が4年ぶりに増加し、新型コロナの影響下でも海外進出の意欲が衰えなかったことがわかります。
この記事では、JETROの調査や最前線で企業の海外進出を支援する食品輸出コンサルタント高野氏のインタビューをもとに、海外進出の背景や海外進出に欠かせない翻訳スキルを明らかにしていきます。
海外進出が増加している背景
海外進出が盛んになった背景には、日本の少子高齢化による国内市場の縮小があります。一方、海外の特に東南アジアの国々では、人口増加や最低賃金の上昇が見られます。
日本の企業が、購買能力のある海外市場に販路を拡大したいと考えるのは自然な流れだと考えられるでしょう。
日本企業の主要な輸出先と輸出品
2020年のJETROの調査によると、輸出の拡大を図る企業がターゲットとする地域は中国が最多で次が米国でした。中国・米国以外の国や地域の回答率も上昇し、輸出ターゲット先は分散する傾向が見られます。
製造業・非製造業のターゲット国は以下の通りです。
順位 | 製造業 | 非製造業 |
---|---|---|
1位 | 中国 | 中国 |
2位 | 米国 | 台湾 |
3位 | 台湾 | ベトナム |
4位 | 西欧 | タイ |
5位 | タイ | 米国 |
6位 | ベトナム | シンガポール |
7位 | シンガポール | 香港 |
8位 | 香港 | 西欧 |
9位 | インドネシア | マレーシア |
10位 | マレーシア | インドネシア |
ターゲット国への輸出品に関する調査では、食品や機械など様々な回答が見られました。
以下の表は輸出する商品名として頻出した単語の一部です。
順位 | 抽出語 | 商品名の例 |
---|---|---|
1位 | 化粧 | 化粧品、化粧品原料、化粧用ミラー、化粧筆 |
2位 | 日本酒 | 日本酒 |
3位 | 自動車 | 自動車、自動車部品、中古自動車 |
4位 | 雑貨 | 生活雑貨、インテリア雑貨、服飾雑貨 |
5位 | 健康 | 健康食品、健康機器 |
6位 | 菓子 | 和菓子、ベビー向け菓子、洋菓子 |
7位 | 米 | 精米、オーガニック米、米粉、米油、米菓 |
8位 | 冷凍 | 冷凍食品(農林水産物、調理加工品) |
9位 | 清酒 | 清酒 |
10位 | 医療 | 医療機器(カテーテル、注射等)、医療機器部品 |
ターゲット国への輸出品に関する調査では、食品や機械など様々な回答が見られました。
以下の表は輸出する商品名として頻出した単語の一部です。
食品、美容、アパレル、機械、医療など様々な業界の企業が輸出に注力していることがわかります。
海外進出の実態に迫るため輸出が盛んな業界のうち、特に注目されている食品業界の海外進出支援の担当者へインタビューを行いました。
企業の海外進出の背景やコロナ禍の状況についてより深く迫っていきましょう。
食品輸出コンサルタント高野氏インタビュー
高野氏は企業の海外進出のコンサルタントをなさっており、専門分野は食品の輸出。商社での勤務経験を活かし、これまでに多くの企業の海外進出の支援を手掛けてきました。この度、企業の海外進出の実情に詳しい高野氏に、企業の海外進出が注目されている背景や、コロナ禍前後の変化、海外進出に必要な翻訳スキルについてお話を聞きました。
- ―どんな業種の海外進出を支援しているんですか?
- 食品に関して大きく分けて2つの支援をしてきました。「海外進出」と「輸出」です。現在は主に「輸出」に関わっています。
- ―海外進出について詳しく教えてください。
- 海外進出とは外食産業の海外展開のことです。サイゼリア、ラーメン一蘭、もう少し前だとお寿司屋さんが有名ですね。日本は少子高齢化が進んで、いわゆる「たくさん食べてくれる若者」が減
少しています。外食産業はここ20年ほどずっと海外に市場を広げようと必死です。
以前は現地在住の日本人をターゲットにしていましたが、近年のターゲットは現地の普通の人です。日本のお店という珍しさだけでは勝負ができなくなっているので、現地の人に何が刺さるのか、どんな付加価値を付けるのかというブランディングが重要です。 - ―輸出についても詳しく教えていただけますか?
- 日本から商品を持って行って現地で売る、いわゆる物販ですね。現地で何をどう売るか、商品開発や販路開拓などのマーケティングの支援をしています。
- ―食品の海外進出が盛んになった背景はなんでしょうか?
- 「食文化」と言うように「食」はその国の文化を象徴する側面があります。日本の食品を食べてもらうことは、海外の人々が日本を理解し、親近感を持ってもらうためにも重要です。
近年、日本の国全体で食品の海外進出を盛んにしようという流れがあります。2021年にようやく輸出高が1兆円を超えました。2030年までに5兆円、つまり今の5倍にするという目標があるんですよ。国は海外進出・輸出のために様々なサポートをしています。
海外進出を国が支援する背景には、日本の農林水産業を活性化させ、食料自給率をあげようという狙いもあります。少子高齢化した日本国内の食料需要に頼っていては、農林水産業は衰退していくばかり。農林水産業が衰退すると食料自給率はさらに下がり、ますます輸入に頼ることになります。輸入に頼りきりになってしまうことは、非常に危険なんです。実際に、現在のウクライナ情勢は日本の食に大きな影響を与えていますよね。この状態が長引けば、さらなる値上げや食料の不足が起こるでしょう。
そういった危機的状況を回避するためにも、日本は国をあげて農林水産業の活性化とともに、食品の輸出に力を入れているというわけです。 - ―企業の支援はどのように行われるのですか?
- たとえば、JETROでは輸出プロモーター事業が行われています。生産者や企業に1名のコンサルタントがつき、商品開発や販路開拓について一緒に考え、最終的には支援企業が独り立ちできるように伴走型の支援を行います。企業は国の支援により無料でコンサルティングが受けられるようになっています。
日本の食品輸出は、農林水産業の現場を知る農林水産省と、製造業や貿易をよく知る経済産業省が連携して、2030年の目標達成を目指し推進されています。 - ―コロナ禍の前後でなにか変化がありましたか?
- あらゆる状況が激変していますね。
まずは市場の環境。展開しようと思っていた国・地域がコロナ禍の影響で経済情勢が変化していて、「今までのルートでは売れない」ということが多発してます。
次はマーケティングの手法について。どの業種でも同じだと思いますが、現地に行けないことでマーケティングの難易度があがっています。食品についてはその場で「食べてみてください」という試食商談ができない。オンライン面談では商品の魅力を伝えきれず、もどかしい経験をする場面も多いです。
一番大きな変化は物流がマヒしていることです。コロナ禍の影響で税関を始めとした諸機関のが業務が縮小し、貨物の積み下ろしなど港湾業務が追い付いていないことが原因で、船が着いているのに港に入れないんです。
そのため船のスケジュール変更が頻発し、輸送用のコンテナ不足や便数減で船積予約ができないということが起こります。さらには船賃が高騰するなど「商品が成約できたのに送れない」という状況が続いています。輸出先の国内物流も停滞し、混乱しているケースもあります。
現在、コロナについてはやっと先が見えてきたといえます。ただ、ウクライナ情勢の変化で再度状況が一変してしまいました。色んな人があの手この手で事態の収拾を目指しています。 - ―海外進出するうえで、書類の翻訳にはどんなスキルが求められますか?
- 表現・内容・翻訳の3つの軸で以下のような観点を持つことが大切です。
表現について
日本語の文章を作成するときには、できる限り端的な日本語で表現することが大切です。伝えたい内容を、端的な日本語で、短く伝えるようにしましょう。簡潔な文章がいいですね。翻訳する前の日本語の文が複雑だと分かりにくい翻訳文になってしまいます。
前後関係の把握が必要な逆説表現や複文表現は避けたほうが良いです。単純ですが、簡単に意識できる大切なコツです。
内容について
相手国の求める情報が網羅されていて、かつ相手が興味を持ちやすい内容にしましょう。おもしろいな、真剣に話を聞いてみようかな、と思われる内容が理想的ですね。たくさんの内容の中から、削って、磨いて、コンテンツを選ぶことが重要です。
翻訳について
相手の文化を考えて翻訳することが大切です。例えば、日本で「りんご」というと『サンふじ』のように「大きくて甘い」というイメージですが、国によっては小さく実がしまっていて酸っぱいもの、というイメージのこともあります。「りんご」を「apple」と訳しても書き手の意図が伝わるとは限らないということですね。日本独特の言い回しは相手国が理解しやすい表現に置き換えて説明する必要があります。
まとめ
日本企業に海外進出が求められる背景には、少子高齢化社会を乗り切る企業の生き残りをかけた戦略があることがわかりました。また、特に力が入れられている食品輸出には、日本の農業水産業の活性化や食料自給率の向上という長期的な目標があることも見えてきました。食品輸出コンサルタントの高野氏のお話からは、翻訳する際、表現・内容・翻訳の3つの軸で大切なポイントがあることがはっきりしました。海外進出に求められる翻訳は「相手を惹きつけ、異なる文化を持つ読み手に正しく伝わる翻訳」です。
新潟印刷では、これからの海外進出に求められる「相手の文化を想定した伝わりやすい翻訳サービス」を提供しています。進出先・業種に合わせた高精度の翻訳で企業の海外進出実現をお手伝いをする「翻訳ワンストップサービス」です。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。